2006年7月25日

日本とは対照的に、ヨーロッパのメディアのトップニュースは、レバノン戦争一色です。

レバノン側では、すでに死者が300人を超えておりその大半が民間人という、受け入れがたい状況です。ライス国務長官ら各国の外相が、イスラエルやレバノンを訪れて、停戦のための工作を行っていますが、この地域をめぐる状況は複雑なので、すぐには解決策は出ないでしょう。なぜかというと、レバノン南部に巣食っているシーア派のテロ組織ヒズボラは、イランとシリアの強力な支援を受けているからです。

ヒズボラがイスラエルの兵士2人を誘拐した日は、イラン政府が核開発をめぐる交渉で、EU提案に回答を出す予定の日でした。つまり、イランにとっては、レバノン紛争のおかげで核開発問題への国際社会の関心が弱くなるという、効果があるのです。また、ヒズボラはトラックの荷台から発射される、射程20キロのカチューシャ・ロケットだけでなく、射程が200キロのゼゼル(地震)型・地対地ミサイルなど、1万発のロケット弾やミサイルを保有していると言われますが、その大半はイランやシリアから入手したものとされています。特に中国製のシルクワーム型・地対艦巡航ミサイルによって、レバノン沖でイスラエルの艦艇が攻撃されて行動不能に陥ったのは、イスラエル軍にとって衝撃でした。ヒズボラは、イランやシリアの諜報機関や軍と、密接に連携している可能性があります。

特に、戦闘が今後エスカレートした場合、イランが許可すればテルアビブを射程内に収めるゼゼル型ミサイルが発射される恐れもあります。その場合、イスラエル側の報復攻撃はさらに激しさを強めるでしょう。

さらにシリアも、レバノンのハリリ首相暗殺事件をめぐる無血革命で、20年以上にわたり属国のように扱っていたレバノンから去年撤退させられるという、不名誉な出来事を経験しています。このため、レバノンからの難民を受け入れ、イスラエルと戦うシーア派過激派を支援することによって、レバノンでの影響力を再び強めるという狙いもあるでしょう。こう考えると、レバノンは過去に何度もそうであったように、周辺の強国の代理戦争の舞台に化してしまう恐れがあります。ようやく祖国が内戦の痛手から立ち直り始めていたところだけに、レバノン人たちの悔しさは、深いと思います。

さらに、ヨーロッパでイスラエルやユダヤ人に対する反感がこの戦争によって、強まることは間違いありません。ドイツのメディアには、すでにその兆候が現れています。